内製化・依頼先の選び方
広告運用を内製化する前に|担当・権限・引継ぎを揃える
代理店との契約更新が近づき、社内で「そろそろ広告運用を自分たちでやりたい」という話が出た。それでも、何から決めればよいのかは分からない。打合せで「アカウントを移せば終わりですか」と聞かれて、答えに詰まってしまう。この記事は、そんな場面を想定して書いています。
内製化を決める前に、紙1枚でもよいので次の3つを書き出しておくことをおすすめします。どの業務を社内に戻すか。誰がどの権限で何を決めるか。外部から何を受け取れば引継ぎが終わったと言えるか。
アカウントを移すだけでは、「なぜこの設定にしたのか」「どうなったら止めるのか」といった判断の理由は手元に残りません。その結果、運用が担当者一人の経験に頼りがちになります。ここでは、一般事業会社のマーケティング責任者が、代理店や外部パートナーとの打合せ前に埋められる記入例を紹介します。
この記事の内容
全部を一度に戻さなくて大丈夫です|社内で持つ業務の分け方
戦略、アカウント設計、入稿、日々の調整、クリエイティブ制作、分析を、一度にすべて社内へ移す必要はありません。分ける目安は「自社の事業の情報がないと決められないかどうか」です。
たとえば、在庫が少ない商品の広告を続けるか、問い合わせに対応できる人手が足りているか、販促の時期にどこまで予算を使うか。こうした判断は、在庫や利益率、販促カレンダーを知っている社内のほうが早く決められます。一方、媒体の設定作業や制作物をたくさん作る作業は、外部と分担しても回せます。
| 業務 | 社内が持つもの | 外部と分担しやすいもの |
|---|---|---|
| 目標と予算 | 目標の決め方、上限予算の決裁 | 媒体ごとの配分の提案 |
| 入稿・日々の調整 | 停止・増額の最終判断 | 設定作業、異常の一次確認 |
| クリエイティブ | 訴求の優先順位、表現の承認 | 制作、比較案の作成 |
| 分析・報告 | 受注・問い合わせなど事業の数字との突き合わせ | 媒体レポートの作成 |
この表は編集部による整理の一例です。どちらの列に置くかは、社内の人数や慣れ具合によって変わります。クリエイティブを比べるときに、何を変えて何を同じ条件に揃えるかは、広告クリエイティブの比較|仮説と判定条件を揃える方法で詳しく扱っています。
図で整理:実行する3つのステップ
- 範囲を分ける
戦略・入稿・調整・制作・分析を業務ごとに並べ、在庫や利益率など事業の情報が必要な判断は社内、設定や制作の作業は外部と分担する表を作る。
- 権限と目安を決める
広告・計測・請求の管理者権限と成果として数える行動を確認し、停止・増額・相談の目安と設定を変える間隔を書き出す。
- 引継ぎと振り返りを回す
権限一覧・成果の定義書・運用ルール・変更履歴・クリエイティブの一覧を受け取り、週次・月次で仮説と判断の理由を振り返る。
引き継いだあとに困らないよう、権限と「止める・増やす」の目安を先に決める
管理画面の権限と、成果の数え方を確認する
内製化で見落としやすいのが、管理画面の権限と、計測の設定を誰が持っているかです。Google広告ヘルプのコンバージョン測定の案内によると、Googleアナリティクスからコンバージョン(広告の成果として数える行動)を取り込むには、Google広告の管理者権限と、リンクしているアナリティクスのプロパティの編集権限が必要です。また、広告アカウントの種類(組織か個人か)は作成時に決まり、あとから変えられないとされています。
既存のアカウントを引き継ぐか、新しく作るか。これは、こうした点を外部パートナーと一緒に画面で確かめてから決めると安心です。
何を成果として数えるかも、社内で決めておきたいことです。同じ案内では、購入、登録、電話問い合わせなど、広告主が価値があると判断した目標を選ぶよう説明されています。
迷いやすい場面ごとに、目安と相談先を決めておく
担当者が一人で悩みがちなのは、たとえば次のような場面です。
- 予算を増やす・減らすとき
- 配信を止めるとき
- 新しいクリエイティブを出すとき
- 上長や外部パートナーに相談するとき
それぞれの目安には、広告の数字だけでなく、在庫や利益率など事業側の状況も入れておくと、判断が偏りにくくなります。
自動入札を使う場合は、設定を変える間隔にも気を配りたいところです。同じヘルプでは、標準で7〜14日の学習期間があり、その間に予算や目標を手動で頻繁に変えると学習がリセットされ、最適化が遅れる可能性があると案内されています。社内のルールに「設定を変える間隔」と「変える前に誰に相談するか」を書いておけば、担当者が単独で何度も設定を触ってしまう事態を防ぎやすくなります。仕様は変わることがあるため、運用を始める時点で公式ヘルプをもう一度見ておきましょう。
「引継ぎ完了」の線を引く|受け取るものの記入例
外部から何を受け取れば完了とするかを決めておかないと、引継ぎが曖昧なまま続いてしまいます。以下は編集部が作った記入例です。項目名や受け手は仮のものなので、自社の体制に合わせて置き換えてください。
| 受け取るもの | 中身の例 | 社内の受け手 | 完了の目安 |
|---|---|---|---|
| アカウント・権限一覧 | 広告アカウント、計測ツール、請求先ごとの管理者と権限 | マーケ責任者 | 異動や退職があっても社内に管理者が残る |
| 成果の定義書 | 数える行動、計測方法、重複の扱い | 分析担当 | 社内の受注・問い合わせ記録と突き合わせられる |
| 運用ルール | 停止・増額・相談の目安と連絡先 | 運用担当 | 新任者が読んで判断できる |
| 変更履歴 | 日付、変更内容、理由、変更者 | 運用担当 | 直近の主な変更の理由を説明できる |
| クリエイティブの一覧 | 訴求、公開期間、素材の利用条件 | 制作担当 | 素材ごとに再利用できるか分かる |
素材は、使ってよい期間、媒体、二次利用の可否を確かめてから受け取ります。引継ぎ後に使えない素材が混ざるのを防ぐためです。
振り返りを続けて、自分たちで判断できる状態へ
週次や月次の振り返りでは、結果の数字だけでなく、そのとき立てた仮説と判断の理由も一緒に見返します。正解を教わる場ではなく、次は担当者が自分で決められるようになるための時間と考えると進めやすくなります。
内製化の目的は、外注費を減らすことそのものではありません。事業の事情と広告を社内でつなぎ、より速く決められる状態をつくることです。
広告以外の施策も含めて、どこから手を付けるか迷う場合は、マーケティング施策の選び方|広告・SNS・採用・海外展開の入口が次に読む記事として役立ちます。広告・SNS・採用・海外展開を目的別に比べる観点を整理しています。
今日できる一歩としては、まず最初の業務の分け方の表を、自社の状況で埋めてみることから始めてみましょう。埋まらなかった欄が、そのまま外部パートナーとの相談事項になります。
埋まらない欄が多い、あるいは権限や計測の状態を自社だけでは確かめきれない場合は、エッセンスクライアントにご相談ください。当社の広告内製化支援では、現状診断と内製化ロードマップの策定、アカウント構築・計測・運用ルールの標準化、担当者向け研修と実案件でのOJT、週次レビューと改善プレイブックの整備を行っています。
参照資料・本文の確認日:2026年10月11日