集客の全体設計
クリニックのマーケティング体制|院内と外部の役割を決める
院長から「先月の広告、結局どうなったの?」と聞かれて代理店に確認すると、「院内のご確認待ちです」と返ってくる。受付のスタッフに聞いても、何を確認すればいいのか分からない。体制表には担当者の名前が並んでいるのに、なぜか話が前に進まない。そんな場面を想像してみてください。
この記事では、日々の集客の仕事について「決める人・作業する人・確認する人」と、渡す資料・受け取るものを1枚にまとめます。たとえば原稿は外部で作り、診療内容は院内で確認する、といった分担です。発注前の準備やシステムの引継ぎではなく、毎日の仕事で判断する人が曖昧にならないようにするところから考えます。
こうした停滞は、担当者の頑張りが足りないから起きるわけではありません。多くの場合、業務ごとに「誰が決めるか」「誰が手を動かすか」「誰が公開前に見るか」と、「何を受け取り、何を次に渡すか」が書かれていないことが原因です。この3つの役割と受け渡しを業務ごとに一行で書くと、院内と外部の線引きがぐっと決めやすくなります。
広告の設定やレポート作成は外部に任せられても、受け付けられる予約枠、診療内容の説明、公開してよい表現の最終判断は院内に残ります。この記事では、その線引きを役割分担表に落とす手順と記入例をご紹介します。
この記事の内容
担当者の名前を書いたのに進まないのはなぜ?
「広告は代理店、SNSは受付のAさん」という書き方では、誰が決め、誰が作業し、誰が公開前に目を通すのかが見えません。止まり方には、よく次の3つの形があります。
- 決める人がいない:予算の変更や配信の停止を誰も決められず、外部からの提案が保留のまま残る。
- 必要な情報が届かない:外部は来院数を知らないため、報告がクリック数や表示回数で終わってしまう。
- 公開前に見る人が曖昧:文面やページが誰の目も通らずに公開される、あるいは確認待ちのまま止まる。
2つ目は、身近なところから改善できます。たとえば初診の問診票にある「当院を知ったきっかけ」の選択肢を、実際に出している媒体名(Google検索、Googleマップ、紹介、看板など)に揃え、院内で数えた結果を外部へ渡す流れを決めておく方法です。「インターネット」という選択肢だけでは、どの媒体を続けるかの判断に使えません。
図で整理:実行する3つのステップ
- いまの作業を書き出す
予約ページの点検、流入元・新患数の集計、広告運用、表現の確認、再診案内、権限の管理など、院内と外部で行っている作業を一覧にする
- 3つの役割と受け渡しを書く
各業務に判断者・作業者・確認者を一人ずつ置き、必要な情報と次へ渡すものを記入して空欄をなくす
- 月に一度見直して直す
渡すものが届いたか、確認待ちで止まった行がないかを見て、情報不足か決める人の不在かをメモし、翌月の役割に反映する
業務ごとに「決める・作業する・見る」を書いてみる
ここでいう3つの役割は、判断者(最終的に決める人)、作業者(実際に手を動かす人)、確認者(公開や実行の前に目を通す人)です。さらに、その業務に必要な情報(入力)と、次の人へ渡すもの(成果物)を並べます。
以下は編集部が作成した仮の記入例です。職種や人数は医院ごとに置き換えてみてください。
| 業務 | 判断者 | 作業者 | 確認者 | 入力 | 成果物 |
|---|---|---|---|---|---|
| 月次の重点と受付可能枠 | 院長 | 事務長 | 院長 | 診療予定・休診日 | 翌月の方針メモ |
| 広告の配信・予算変更 | 院長 | 外部の運用担当 | 事務長 | 方針メモ・受付可能枠 | 変更履歴 |
| 流入元・新患数の集計 | 事務長 | 受付 | 事務長 | 問診票・予約の記録 | 媒体別の匿名集計表 |
| 広告文・ページ表現の確認 | 院長 | 外部の制作担当 | 院長 | 原稿・根拠資料 | 確認済みの版と記録 |
| 再診案内の文面と対象 | 院長 | 受付 | 院長 | 診療内容ごとの案内時期 | 承認済みの文面 |
| アカウント権限の管理 | 院長 | 事務長 | 院長 | 利用者一覧 | 権限の一覧表 |
最後の権限の行は、つい見落とされがちです。たとえばGoogle広告にGoogleアナリティクスのコンバージョン(予約や問い合わせなど、成果として数える行動)を取り込むには、Google広告の管理者権限と、リンクしたアナリティクスのプロパティの編集権限が必要だとGoogle広告ヘルプのコンバージョン測定の説明に書かれています。誰がどの権限を持っているかを一覧にしておくと、外部の担当者が交代したときや契約を終えるときにも、作業が止まりにくくなるのでおすすめです。
役割分担表を3段階で作る
1. いま行っている作業を書き出す
院内と外部で実際にしている作業を、思いつくまま並べてみましょう。予約ページの点検、予約完了率や再診率の集計、問診票の流入元の集計、Googleビジネスプロフィールの更新、口コミをお願いする流れ、再診案内、広告運用、レポートの確認などです。
2. 3つの役割と受け渡しを書き込む
各行に判断者・作業者・確認者を一人ずつ入れ、作業に必要な情報と、次の人へ渡すものを書きます。判断者と確認者が同じ人でも構いませんが、空欄だけは残さないようにします。
「何を成果とするか」も判断者が決める項目です。Google広告では、購入、登録、電話問い合わせなど、広告主が価値があると判断した行動をコンバージョンとして選べると同じヘルプで説明されています。予約完了だけを数えるのか、電話も含めるのかは、院内で決めておきたいところです。
3. 月に一度見直して、空欄と止まった行を直す
月次の振り返りで、渡すはずのものが予定どおり届いたか、確認待ちで止まった行がないかを見ます。止まった行には「必要な情報が足りなかった」のか「決める人がいなかった」のかを一言メモしておくと、翌月どこを直せばよいかが見えてきます。
院内に残す判断と、外部に渡せる作業
どちらに振り分けるか迷った行は、次の考え方を目安にしてみてください。
- 診療内容、受け付けられる枠、患者さんへの説明に関わる決定は、院内の判断者が持つ。
- 患者さんの個人情報を扱う集計は院内で行い、外部には個人が特定できない集計値を渡す。
- 手順が決まっていて繰り返す作業(入稿、配信設定、レポート作成)は、外部の作業者に渡しやすい。
- 医療広告の表現に疑問がある場合は、ガイドラインなどの一次資料で確認できるまで公開を待つ。
院内と外部で「新患」や「予約」の数え方(何を分母にするか、どの期間で区切るか)がずれていると、表の「入力」欄がなかなか埋まりません。その場合は、検索・予約・来院の定義を揃える記事で言葉の意味を先に揃えておくと進めやすくなります。表現確認の行をもう少し具体的にしたいときは、医療広告の確認手順を扱った記事が、入稿前に根拠を集めて判断を記録する流れを紹介しています。
今日できる一歩
まずは、いまの業務を6〜10行ほど書き出し、判断者の欄が空いている行から埋めてみましょう。全部を一度に整える必要はありません。止まっている業務が一つ動き出すだけでも、院内と外部のやり取りは変わってきます。
どこまでを院内に残すか決めきれない、外部との受け渡しをどう設計すればよいか迷う、という部分があれば、エッセンスクライアントにご相談ください。当社のクリニック向け広告運用代行や広告内製化支援では、予約・来院を基準にしたレポーティングや、運用ルールの標準化を支援内容としてご案内しています。
参照資料・本文の確認日:2026年10月11日